コンデンサ式スポット溶接器

ニッケル線とニッケル板のような微細な材料を簡単に溶接することができるスポット溶接器を作ってみました。コンデンサにチャージした電荷で溶接するタイプのスポット溶接器で0.5mmニッケル線と0.2mm厚ニッケル板をしっかり溶接できるものに仕上がりました。

構成

ブロック図

回路構成は非常に簡単です。スイッチング電源、大容量の電解コンデンサと大電流スイッチ、スイッチを制御する制御回路から構成されています。15V電源と大容量の電解コンデンサを直接接続してしまうと、電解コンデンサが充電される際の突入電流によりスイッチング電源が故障する恐れがあります。そのためスイッチング電源と電解コンデンサの間に定電流回路を挿入します。これにより、充電時の電流と溶接時の短絡電流を制限します。

スポット溶接器の構造

スポット溶接器の本体回路はアクリル板上にマウントしました。各基板がまとまっていればよいので、特にケースは製作していません。溶接器から溶接電極へは太いケーブルを使って配線されています。上下の電極で溶接したいものを挟み込み、大電流を流して溶着します。

アクリル板上に必要な回路を固定したシンプルな構造
溶接用電極

コンデンサバンク

デジットで購入した16V 10000uFの電解コンデンサを基板上に20個並列接続して構築しました。合計で16V 0.2Fのコンデンサバンクとなります。15V充電した時の充電エネルギーは22.5Jとなります。当初は10個並列としていたのですが溶接対象となる部材が上手く溶け合わないことがありました。そのため10個追加して0.2Fとしています。

大電流スイッチ

大電流をスイッチングするためのスイッチとしてパワーMOSFETを用います。今回製作した溶接器のコンデンサバンクは、充電電圧が低く充電されるエネルギーの総量も小さめです。そのため、できるだけ損失の小さなスイッチを用いる必要がありました。コンデンサに充電する電圧が小さい場合、リレーなどの機械式スイッチを用いると接点抵抗による損失が大きくうまく溶接することが難しくなります。

IRFP4321というパワーMOSFETを6個並列接続して用います。パルスドレイン電流は一個当たり330Aなので、1980A定格の大電流スイッチということになります。

IRFP4321 - NチャネルパワーMOSFET | インフィニオン テクノロジー
IRFP4321 is a N-channel power MOSFETs with VDS max: 150 V, RDS (on) max: 15.5 mOhm, Package: TO-247, Technology: IR MOSF...

制御回路

制御回路は充電電圧の監視と大電流スイッチをONにする時間を制御します。コンデンサの端子電圧をR8C/M12Aマイコン内蔵のADCにより監視し、充電が完了されるとパルス生成(赤いボタンスイッチ)が有効になります。スイッチが押されると大電流スイッチを駆動するパルスが生成され、コンデンサに蓄えられた電荷が大電流スイッチを経由して溶接材料に流れ込むという仕組みです。

電極

ジャンクのXYステージをアクリル板で製作したスタンドに固定して電極スタンドを製作しました。XYステージを用いることで電極位置や挟み込む圧力を調整できるので便利なものに仕上がりました。電極は銅の丸棒を旋盤加工して製作しました。銅丸棒の端面には、配線用のねじ穴を切ってラグ端子をねじ止めできるようにしました。

ワイヤー

大電流用の配線にイーグル模型 シリコン銀コードセット・12G[ゲージ]を用いました。電流容量の十分大きな太いものを用いる必要があります。細い配線の場合は配線が焼き切れるおそれがあります。また、配線抵抗による電圧降下によって損失が増えることを防ぐ目的もあります。

イーグル模型 シリコン銀コードセット・12G[ゲージ] (赤、黒、青 各60cm) 980
汎用パーツ。(Amazon.co.jpより)

溶接の様子

0.5mmニッケル線と0.2mm厚ニッケル板を溶接した時の様子です。材料同士が溶け合い、しっかりと溶接することができているようです。

スポット溶接した0.5mmニッケル線と0.2mm厚ニッケル板

コメント