アナログ制御方式のCVCC電源装置

以前、デジタル方式のCVCC電源装置を作りましたがノイズが大きいということと、誘導性負荷を接続したときに急激な負荷変動が生じると、その逆起電力によって故障してしまうという問題がありました。

というか、容量の大きな電源装置が完全に壊れてしまったので新しい電源装置を早急に製作する必要がありました…..

余りにも使いにくいので、アナログ回路を用いたシンプルなCVCC電源装置を作ることにしました。

仕様

出力範囲はデジタル制御のCVCC電源とほぼ同じ0V~25Vとしました。また、電流可変範囲はトランスと損失を考慮して0A~4Aとしました。

定電圧出力 DC 0~20V
ボリュームにより連続可変

定電流出力 DC 0~3.5A
ボリュームにより連続可変

出力電圧モニタ
0.0V~20.0V 0.1V分解能

電流モニタ
0.00A~3.50A 0.01A分解能

設定方式はアナログ可変抵抗器
可変抵抗器なので設定値が不揮発性です。

回路設計と動作確認

まず初めに動作検証用回路の設計を行いました。その回路を元に動作検証用の回路をユニバーサル基板上に製作しました。

初期試作時の回路構成です。実際に動作を確認してみると0V~12V程度、までの出力しか得られないことが判明しました。

OPアンプの回路出力が振り切れてしまっているようです。今回のCVCC電源装置の回路構成はNch-MOSFETを用いて入力電圧をレギュレーションする方式を取っています。Nch-MOSFETはダイオードを介してオペアンプの出力に接続されています。オペアンプの電源電圧を大きくするとNch-MOSFETのドレイン電流が大きくなり、出力電圧が大きくなる仕組みです。しかし、この回路構成では、10V出力したところで出力電圧が上昇しなくなっていました。

回路動作を追って調査を進めて行くと、オペアンプの出力が電源電圧に張り付いていることに気が付きました。こうなると、オペアンプの出力が飽和して大きくならないのでゲート側からオペアンプに向かって電流が流れ続けてしまいます。ゲート電圧が上昇せずドレイン電流をこれ以上流すことが出来なくなるので、出力電圧も大きくなりません。

そこでオペアンプの出力に15Vのツェナーダイオードを追加して15Vのバイアス電圧を得ることにしました。こうすることで0~20Vの出力可変範囲を得ることが出来るようになりました。使用する部品によっては15Vのツェナーダイオードを1個だけではバイアス電圧が足りない場合もあります。その場合はダイオードを直列に接続することで必要なバイアス電圧を得るようにします。

CVCC電源の回路

回路図

当初設計した回路からの大きな変更点は以下になります。
・FET制御用バイアス電圧確保用の15Vツェナーダイオード
・出力にリレー追加(電源投入・遮断時の過渡過電圧遮断用)
・OPアンプの変更(NJM4580→OP2227 低オフセット+帯域アップ)

オペアンプを利用した定電圧制御回路と定電流制御回路がダイオードORされています。今回の回路構成では、出力電圧の小さな方が優先的にFETを制御する形になります。

FET

IRFP4321というパワーMOSFETを用いました

代表的なスペックは以下の通りです。
VDS 150V
ID 78A
PD 310W

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非常に大きな連続ドレイン電流と許容損失を持つFETを選定しました。最大で120Wの損失が発生するため、大きなFETを使う必要があります。

放熱

MOSFETの冷却用に421Kというヒートシンクを用いました。
強制空冷で使用します。

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80mm角のDCファンをヒートシンクの直近に配置することで強制空冷を行います。

出力リレー

オペアンプの電源(制御回路電源)が先に落ちてしまうと、出力に15Vが出てきてしまう問題が発生します。出力に異常な電圧出力が発生しないようにリレーで出力制御を行うことでこの問題を回避することにしました。

電源投入時は出力をリレーによって切り離しておきます。制御用電源が立ち上がって回路電源が安定してからリレーをONし、出力端子に電源回路を接続します。電源OFF時には、リレーが直ぐにOFFになることで出力端子と電源回路を切り離します。

CVCC電源装置の構成

電圧・電流計

C2000マイコン内蔵のADコンバータへ電源回路からの電圧値を入力しています。内蔵ADコンバータは0~3.3Vの範囲をAD変換することができます。電圧はフィードバック用の分圧抵抗の出力(0~)、電流はシャント抵抗両端電圧をオペアンプで増幅(0~2V)したものを入力しています。

C2000-CPUボードとリレーが実装された電圧・電流計基板

測定された電圧・電流値は、7セグLEDに表示されます。7セグLEDは74HC595というシフトレジスタを用いてシリアルデータで制御できるようにしています。

74HC595を2個直列にすることで16bitのパラレルデータを得られるようにしてあります。上位8bitを桁選択信号、下位8bitを7セグLEDデータとして用います。一定の間隔で桁選択信号と7セグLEDデータを同じタイミングで更新していくことでダイナミック点灯を実現しています。

7セグLEDディスプレイの回路図

筐体

アクリル板をCNCで加工して製作しました。アクリル板はCNCで切削加工しました。

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