CVCC電源装置 (ハードウェア)

CVCC電源装置を製作しました。今回はこのハードウェア構成について詳しく説明します。

ブロック図

この電源装置はスイッチング方式で出力電圧を安定化させています。スイッチング方式とすることで小型形状で可変出力が可能な電源装置を実現しています。

パワー回路の制御はマイコンを利用しています。出力電圧・電流をAD変換してマイコンに取り込み演算によって出力電圧・電流のフィードバック制御を行います。

回路図

MCU

テキサスインスツルメンツ社製のC2000マイコン「TMS320F28035PNT」を用いました。CLAというコプロセッサを利用してマイコン単体で高速なフィードバックループを構築しています。

12bit内蔵ADC→CLA演算→PWM更新→PWM出力となり、アナログ信号のAD変換からPWM出力までの一連の流れをマイコンワンチップで処理しています。CLAはPI制御の演算を担当しています。

Mainコアはインターフェースのダイナミック点灯制御やフィードバックループへの基準電圧・基準電流設定値の処理を行っています。CLAはフィードバック演算の処理を行います。基準値とAD変換値から偏差を取得してPI制御を行います。

TMS320F28035 のデータシート、製品情報、およびサポート | TI.com
TI の TMS320F28035 は 60MHz、128KB フラッシュ、CLA (制御補償器アクセラレータ) 搭載、C2000™ 32 ビット マイコン です。パラメータ、購入、品質に関する情報の検索

Digi-KeyやMouserで購入することができます。最安はLCSCという中国の部品商社です。

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ソフトウェアについては別の記事で詳しく説明しようと思います。

パワー回路

ハーフブリッジ回路

LM5104というハーフブリッジドライバを使ってスイッチング段を構成しています。FETの制御タイミングは、このドライバがすべて生成してくれます。マイコンは1相PWMを生成してデューティのみ制御すればOKです。

LM5104 のデータシート、製品情報、およびサポート | TI.com
TI の LM5104 は 8V UVLO と適応型遅延機能搭載、2A、100V、ハーフブリッジ・ゲート・ドライバ です。パラメータ、購入、品質に関する情報の検索

LCフィルタ

今回の電源装置では、スイッチング周波数は100[kHz]としています。100[kHz]のキャリアを十分にカットすることのできるフィルタが必要です。

L=47[uH],C=122[uF] fc=2.1[kHz]
100[kHz]では-60[dB]となって十分リップルを減衰させることができます。

フィルタの特性は制御器(制御ソフト)を設計する上で重要になります。
このフィルタの特性に合わせた制御器を設計する必要があります。

電圧・電流検出回路

電圧測定

分圧抵抗 (R15,R16) によって出力電圧を分圧してOPアンプに入力します。入力電圧は分圧抵抗器によって1/10に減衰されます。20V出力で2Vの検出電圧となります。

C2000マイコン内蔵ADCの入力部は特にバッファされていません。そのまま入力部に付加されているコンデンサに測定回路から電流が流れ込みます。測定回路のインピーダンスが大きい場合このチャージインジェクションが問題となります。チャージインジェクションの影響を受けて測定誤差が大きくならないように オペアンプ (U3)でバッファしてADCへ入力してやります。

ADC入力部のインピーダンスモデル(TMS320F28035データシートより)

電流測定

シャント抵抗(R17)でローサイド側の電流を測定します。R17に発生する電圧をオペアンプ (U3) で増幅してC2000マイコン内蔵ADCへ入力します。

R17として秋月電子で入手した抵抗を用いました。温度係数の良いものを採用して発熱による測定値のドリフトが小さくなるようにしています。

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オペアンプ

CPUのアナログ電源が3.3Vなので単電源で低い電圧から動作できるオペアンプが必要でした。 そこでADA4528-2という単電源動作のオペアンプを使いました。 電流検出側は検出電圧が小さいためオフセット電圧のドリフトが小さいことも重要です。

ADA4528-2データシートおよび製品情報 | Analog Devices
ADA4528-1/ADA4528-2は、レールtoレールの入力および出力振幅を持つ、超低ノイズ、ゼロ・ドリフトのオペアンプです。2.5μVのオフセット電圧、0.015μV/℃のオフセット電圧ドリフトおよび97nV p-p typのノイズ(0.1Hz~10Hz@AV=+100)を備えているため、ADA452...
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※ADA4528-2だと正常に動作しないことが分かりました。

選定の基準は同じでOPA2333という単電源動作のオペアンプに変更しました。

OPA2333 のデータシート、製品情報、およびサポート | TI.com
TI の OPA2333 は 1.8V、17μA、2 チャネル、マイクロパワー、ゼロドリフト CMOS オペアンプ です。パラメータ、購入、品質に関する情報の検索

AD変換

OPアンプ出力はC2000マイコン内蔵の12bitADCへ入力してAD変換を行います。
AD変換後のデータはCV,CC制御を行うためのフィードバックとして用いられます。
また、同時にモニタ値として7セグメントLEDに表示されます。

インターフェース

7セグLED表示部

7セグメントのLEDを2つ使って出力電圧と電流を表示します。シフトレジスタ74HC595を2つ使ってSPIで 7セグLEDを制御できるようにしました。シフトレジスタを用いることで表示基板とメイン基板間の通信線の本数を節約します。 CN4とCN5へ接続されます。

7セグメントのLED はこれ

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電圧・電流可変ダイヤル

ただの可変抵抗器です。3.3Vを可変してマイコンのADCへ入力しています。可変抵抗器によって決定される電圧値に応じて出力電圧と電流が決まります。CN6とCN7へ接続されます。

主電源

20V 5Aの出力を得るために20V 100W以上の電源が必要になります。
今回はTDKラムダのZWS75BAF12というスイッチング電源を2直で使用しました。

2台を直列接続することで24V6.3Aの電源となり要求の仕様を満たすことができます。

2台のスイッチング電源が内蔵されている

https://product.tdk.com/info/ja/catalog/datasheets/zws-b_j.pdf

筐体

5mm厚のアクリル板をCNC加工して製作しています。端面に2mmのネジを切ってねじ止めすることによってアクリル板を固定しています。

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